めぐり逢う世界

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水素移動触媒(Hydrogen Borrowing Catalyst)を用いたカルボニル化合物のαアルキル化反応

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"Hydrogen Borrowing Catalyst"であるIr触媒やRu触媒を用いたカルボニル化合物の、アルコールによるαアルキル化反応の紹介。副生成物として水しか生じないクリーンな反応系。



"Hydrogen Borrowing Catalyst"はアルコールをアルデヒドに酸化する一方で、自身は金属ヒドリドとなる触媒。この金属ヒドリドを上手く別のものの還元に利用することで上手く系を回るようにしたものが一部で流行っている"Hydrogen Borrowing Catalysis"である。"Borrowing Hydrogen Catalysis"ともいう。

反応機構

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触媒はアルコールをアルデヒドに酸化する一方で、自身は金属ヒドリドとなる。生成した触媒量のアルデヒドは系中に多量に存在するエノラートによって速やかにアルドール生成物を与え、これはE1cB反応によりα,β-不飽和カルボニル化合物を与える。これに対して金属ヒドリドが付加することで形式的にカルボニル化合物のαアルキル化体を与え、触媒サイクルが完結する。アルデヒドは常に触媒量しか存在しないので、アルデヒドのホモアルドール反応などの副反応が起こらなくなっていることがポイントといえる。

メチルケトンのα-アルキル化反応とそれに続くケトンの還元反応

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最初の報告と思われるが、先を行き過ぎていたためかJOCである。生成物のケトンの還元までもが進行してしまっている。過剰量のアルコールを用いずに等量のアルコールを用いて反応を行った場合にはケトンとアルコールの混合物を与える。ケトンはメチルケトンであれば芳香族でも脂肪族でも可。アルデヒドも芳香族でも脂肪族でも可。

メチルケトンのα-アルキル化反応

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上記のJOCのRu触媒と異なり、Ir触媒を用いることでケトンのアルコールによるα-アルキル化反応が進行している。ケトンとしてはメチルケトン以外にもジエチルケトン(+ブタノールで47%)やα-テトラロン(+ブタノールで88%)も用いることが可能。

エステルのα-アルキル化反応

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ケトンではなくエステルのα-アルキル化反応。エステルのエノラートが生成しにくいためか、これまでの例と異なり、大過剰量のエステルを必要とする。

一般的なケトンのα-メチル化反応

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メチルケトン以外をメインに行かせた例。ケトンのアルドール生成物は分子内の立体反発によりレトロアルドール反応を起こし原型に戻りやすい。そこで、立体障害の小さいメタノール由来のホルムアルデヒドを用いてメチル化をするに留まっている。酸素を導入しないと反応効率が下がるが、Rh(III)がRh(I)に還元されてしまうデットエンドを防ぐ役割をしているのだろうとの記述。

オルト置換フェニル-アルキルケトンのα-アルキル化反応

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基質コントロールで一般的なアルキルケトンのα-アルキル化を行かせた例。芳香環のオルト位に置換基がない場合には上記の通りメチル化しか進行しないが、オルト位に置換基があるとその他のアルキル化も進行するようになる。オルト位に置換基がある場合、カルボニル基と芳香環の平面性が崩れるため、ケトンのα位はむしろ空いていて、アルドール生成物の立体反発が小さくなるために進行するのだという。α位が空いていれば行くことの証明としてオルト置換フェニルの代わりにシクロプロピル基を入れたケトンを用いても反応は進行する。dppbz配位子を入れないと、原料ケトンの還元が進行してしまう。
基質コントロールでJACSになるの?という感じだが、筆者らはペンタメチルフェニルケトンの新しい変換法も見出し、これが有用な化合物であるとしている。低温化臭素で処理することで臭化アシルが生じ、これに対して様々な求核剤を置換させることに成功している。

メチルケトンの2級アルコールによるα-アルキル化反応

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2級アルコールを用いてα-アルキル化をした例。2級アルコールからはケトンが生じるため、ケトンとケトンのアルドール反応を進行させなければならない。これもレトロアルドール反応をかなり起こしやすいため、上記の例と同様にオルト置換アセトフェノンでしか効率よくは進行しない。この反応は上記の例とは異なり、オルトメチルアセトフェノンでも15%しか進行せず、オルトジメチルアセトフェノンを用いることが必須となっている。オルト位がともに埋まっていることで平面性が崩れ、カルボニル炭素は混んでいる一方で、α位は空いているのだという。カルボニル炭素が混み合っているため、基質同士のホモアルドール反応は進行せず、α位が空いているため、"Hydrogen Borrowing Catalyst"により触媒量生じたケトンとの交差アルドール反応が進行する。

Limitation

いずれも強塩基性条件を用いており、カルボニルのα位のラセミ化が起きてしまうため、この系での不斉アルキル化反応は困難だと考えられる。

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